樂慎次郎(大阪府立西成高等学校 支援担当:当時)
未來さんは入学当初、実技系の教科は動きもあり比較的興味を示して、ある程度は参加できていました。しかし、他の授業は集中力がすぐに切れてしまい、手やプリントなどを口に入れたり噛んだりする行為が続いたり、時間を持て余して飽きてしまうと声をあげたり、目をつむってそのまま寝入ってしまう状況が続きました。授業の参加も難しく、班活動では周囲の生徒もどう接していいか分からない状況でした。
そこで、大阪府教育庁がすすめる「支援教育地域支援推進事業」より、東住吉支援学校のリーディングスタッフからアドバイスを頂くとともに、未來さんに西成高校でどのような力をつけてもらいたいかを考えました。そして、「クラスの一員として学校生活を送る」ことを目標にして、生徒の状況に合わせた「合理的配慮」によって授業スタイルを作り上げることを未來さんの担任はじめ授業サポートに入る教員の参加による「サポート会議」で共有しました。

学習内容の柔軟な変更や授業評価を組み立てること、同じ動作の定着は1~2か月は同じことを繰り返すくらいの気持ちで取り組むこと、成績評価についても、未來さんの「動作」そのものを評価の対象として位置付けることにしました。プリントや教材の受け渡し、寝ているか起きているかといった自身の活動と、周りの生徒や教員と関わりを持とうとしているか、興味・関心を持とうとしているかという点を軸にして、未來さんの持っている力で、努力をしていた点を積極的に評価する、テストの内容も本人の動作や物の認知を軸に作成することを教員間で共有しました。
未來さんに対して、具体的に話しかけながら動作の練習をする、場の雰囲気に合わせた行動をとるように働きかけることなどを進めることによって、未來さんの様子も徐々に変化していきました。授業中に寝てしまうことがほとんどなくなり、周囲の様子に慣れてくることによって周りに関心を寄せることも増えて、意思表示もハッキリとみられるようになりました。周りの生徒たちも、班活動でどうすれば未來さんから参加できるかを考えるようになり、また休憩時間などに、こちらから働きかけなくてもごく自然に未來さんに話しかけている生徒も増えました。
以下は、「人権」に関する様々な課題について府立高校生徒の発表の場「人権文化発表交流会」で高校3年間の思い出を発表するための未來さんとのやり取りの記録ですが、高校生活で未來さんと様々な生徒や教員とのかかわりを通して育まれたものです。1年生からの未來さんの写真画像、過去のPTA新聞「西高だより」、ホワイトボードも使いながら、未來さんに発問しました。対話をしながら進めましたので、時系列に沿ってではなく話題があちこちに飛びましたが、とてもよく答えてくれました。



